一定期間更新がないため広告を表示しています
ライター・ヤマダユウイチロウが勝手気ままに綴る極私的な食ブログ。
主に九州にて、贔屓にしている一品、お店などを紹介していきます。 お仕事紹介もついでにドウゾご覧ください。 |
三時間後には見た事もないような大金が手に入る。そう信じて疑わなかった。
大学に入り、人生で一番大きな自由を手に入れた。
堂々とタバコが吸えるし、真っ昼間から酒を飲んでもいい。
どれだけ髪を伸ばしても、何色に染めても文句は言われない。
そう、本物の自由を手に入れたのだ。
大学生になったら、絶対やりたいことがあった。
競馬だ。
競馬場に行って生身の馬が戦う姿を見てみたかった。
地方では大きなレースはないため、
手始めに場外馬券売り場でサラブレットたちの勝負を見守ることにした。
生まれて初めて挑んだレースが「桜花賞」だった。
周囲には桜が咲き誇っていたが、頭の中は札束で満開だ。
馬を見る目は高校時代に没頭した競走馬育成ゲームで十分に鍛えてある。
競馬新聞を買って自分なりの予想をたててみたが、
破竹の三連勝。負ける気がしない。
初めての場外馬券売場をグルグル回り、ようやく馬券を手に入れた。
一番早い馬だけを当てればいい「単勝」狙いには絶対の自信があったが、オッズが低い。
一着、二着を当てる「馬連」を選んだ。
入学祝いから工面した軍資金は三万円。
あとは如何に増やすか、である。
実際にお金を掛けるとなると、途端にドキドキした。
この馬だけは外せない、
この組み合わせはオッズが低いからやや多めに張るか、
大穴狙いならこの馬・・・
大学入試の時よりも数倍頭が働いているのが分かる。
一時間以上悩んだ末、予想が固まった。
レース終了後には一〇倍以上に増えているはずだ。
レースが始まった。
本命に据えた馬は素晴らしい末脚を持っている。
レース序盤、後方で機会を伺っている姿を見て、
小さくガッツポーズをした。
最終コーナーを抜け、最後の直線へ。
先頭を走る馬は予想したもう一頭。
あとは本命が末脚を使って馬群を抜け出してくれればいい。
地面に広がる桜の花びらを見るたびに、
あの日破って投げ捨てたハズレ馬券を思い出す。